個人的読書記録等

読んだ本を適当に記録していこうかなと思います

読書記録 2

「消された一家 北九州・連続監禁殺人事件」

豊田正義

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この事件の犯人の一人である松永太はある意味で一種のおぞましい天才である。彼の洗脳技術はパターン化されシステマチックでありながら個人によって臨機応変に対応する。

精神的・肉体的暴力により自尊心の崩壊・恐怖による服従を発生させ、人間関係を自らの手によって断たせることで客観的意見の介在する余地をなくすとともに、自らに対する依存を強める。また肉体的暴力、通電は極端に判断能力を鈍らせる効果もある。

人を奴隷化させるには無力化と断絶化が重要であると本文に書いてあるが松永は見事にそれをやりとげた。始めは抵抗していても不可能だと学習すると無抵抗になり、ついには考えることすら放棄するようになる。

さらに駄目おしとして犯罪に関与させることで自らが培ってきた常識やモラルというべき人格の土台となり得るものを自らの手によって壊させる。これは人格崩壊にも等しい現象でありそうなってしまった人間はもはや判断能力を奪われ、唯言われるがままに従うことしか出来なくなってしまう。さらに生活に様々な制限を加えることで人間性すらも否定し、徹底的に被害者をおとしめている。

このような恐ろしいことを平気で考え実行する松永太という人間がどのような人間なのかと言えば正直全くわからなかった。プライドが高く、自己欺瞞に優れている、みたいなありきたりなことしか出てこない。何故彼がそのような人間になったのか掘り下げて欲しいとは思うが虚飾に塗れ過ぎていて今の自己がどう形成されたかなどもはや彼自身にもわからなくなっているのかもしれない。